龍太郎一味のご無体な学園生活
最初は手のリハビリも兼ねた練習の毎日だった。

ケースからレディ・ブラントを取り出し、中学の頃のように屋上で音を奏でる。

とは言っても、当時の和音の手は思うように動く筈もなく、弦を軽く押さえ、ただ音を出しているだけの状態だった。

たまたま聞いていた生徒に笑われた。

将来を嘱望された天才バイオリニストが、音楽のイロハも知らぬ生徒に笑われる。

だが『下手だ』と笑ってもらえた事で、何かが吹っ切れた気がしたという。


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