ヤコとYシャツとマサくん
「うん、綺麗」
俺は素直に答えた。
本当なら寝たい。
一刻も早く床に入って明日に備えたい。
わずらわしいことから逃れたい。
わずらわしいこと、から?
「前はよく二人で行ったよね、花火とかお祭りとか」
「…うん」
「今は冬だからあれだけどさ」
悲しげに笑うと、帯に手をかける。
その手を、俺は強く掴んでいた。
「今から行く?」
「え?」
「今から行こう‼」
俺はスーツを脱ぎ去り、パン一になると、洋服タンスに顔を突っ込んだ。
「マサくん、なにしてんの?風邪引くし」
「ここらへんに確か…あった‼」
浴衣だ。
二人で買い揃えた、濃い青の浴衣。
さっと羽織、キュと帯を結ぶ。
「ほら行こう‼」
渋るヤコさんを連れ、俺たちは寒空の下に繰り出した…。