ヤコとYシャツとマサくん
「あああぁ‼エロい‼」
私は原稿用紙をクシャった。
危ない危ない。
リディアが官能小説になるところだった。
ふっー、と息を吐き、狭いキッチンでココアをいれた。
カップは一つ分。
マサ君は今日も遅くなるらしい。
ここ最近、帰りは22時を回る。
帰ってきたらきたで、バタンQだし。
まだまだ営業の下っ端だし、休みの日にも会社に呼ばれたり。
そう。
私が言いたいのは、しごく簡単。
それを言っちゃいけないのも分かってる。
マサ君は、大きな部屋に越すためにガンバって働いてくれてるし、将来、子供のためとか、そういうのは幸せ。
うん、幸せよ。
でもね。
だからって今、あんまり放ったらかしにされるのはね…。
あんたもそう思うでしょ?
私は鍋の蓋を開け、昨日も食べてもらえなかった[カレー]に同意を求めた。
いい味は出るだろうけどね。