ヤコとYシャツとマサくん
「足、痛くないんですか?」
マサくんが私の足元を指差す。
あの頃のように。
当時の私は驚くしかなかったんだ。
だって、足、痛かったから。
いつからか、戦ってたんだよね。
すべての物事に立ち向かうために、ハイヒールを履いてたんだ。
それがマサくんの一言で、なんだか力が抜けて。
毎日、履くことはなくなった。
あ、スニーカーって、なんて歩きやすいの?てな具合。
だからマサくんは私にとって、特別な人だったのに…。
「ヤコさん、あの頃モテモテだったじゃん」
「ん?そうかな?」
確かに告白は後を絶たなかったけど、どれもこれも歯の浮いたセリフばかり。
「数々の男たちがヤコという牙城を崩せなかった。そこで俺は分析してみた」
「分析?」
「そう。そしたら、みんな開口一番、背が高くて綺麗ってとこから始まってたから、別の角度から攻めたわけ」
「なにそれ」
突如、明かされた種明かし。
じゃ、結局マサくんも数ある男の一人だったってわけ?
「でも実際、ヤコさんスタイルよくて綺麗だったんだから仕方ないよ」
「…」
心の口角が上がった。