ヤコとYシャツとマサくん


「ユマさんは靴を作ってるんだよ」


「え」


私をの驚きを頷きで返すと、ユマさんは話しだした。


「いきなり靴を、それもハイヒールを作りたいってマサさんに言われて。デザインから全部、マサさんが一人で作ったんですよ、ヤコさんのために」


「ひょっとして…だから帰りが遅かったの?」


「うん、仕事の時もあったけど、どうしても自分の手で作りたかったから。ま、かなりユマさんに助けてもらったけどね」


「マサくん…」


冷たかった足元が、なぜか暖かく感じられてきた。


でも。


「どうしてハイヒールを?」


そう尋ねると、マサくんは真っ直ぐ私の目を見て言った。


「カッコいいから」


「女の子っぽくなくなるよ、背を追い越しちゃうし」


少し見下ろしてしまっている。


それだけで膝を少し曲げようかとも思う。


だけれどマサくんは、


「どんなヤコさんも好きだよ。可愛いヤコさんも、カッコいいヤコさんも、酔っ払ったヤコさんも」


「…ありがとう」


「手を縛られて感じるヤコさんもね」


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