彼と夕日に恋をした。
「え…」


あまりの急すぎて、声がかすれる。


彼から告げられた、別れ。


あんなにも、私達は愛し合ったのに。


鼻が、ツン、として。


喉が、クッ、と痛くなる。


視界は霞んで、ぼやけて。


熱くなった頬に、一筋の涙が伝う。


彼は、自分の目指すもののために、ここを出ていき、もっと大阪の都会の大学に行くらしい。


彼は、それが昔からの夢だって知っていた。


彼は、昔からその才能を開花させていた。


彼の夢を、奪いたくない。


卒業式まで、三ヶ月。


まだ時間はある、って彼は言うけど。


でも…でも…でも!!!!!!!!


『行かないで』


だなんて私には言う資格はない。


彼と出会えた日の様に、夕日が美しく輝いていた。


夕日は、私達の涙を優しく包み込むようにして照らしつけた。
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