初恋
少女は口を紡ぐ
4
そんなことばかり考えてたある日、僕は荷物をランドセルごとすべて忘れた。
教室がざわついている。
クスクス笑い声がきこえてくる。
何だよ、笑うなよ。
呆れ顔の先生が頭に手をあてていう。
「柴田君。どうやったらランドセルごと忘れるの?」
「玄関まで、持って行って、靴、履いて、そのまま・・・玄関に」
「まったく・・・・・・しょうがないから、今日は隣の人に教科書見せてもらいなさい」
「……え」
ドキンとした。
ちらりと藤富千夏の顔を見る。
他の友達と話していたため目は合わなかった。
その日は一つの教科書を二人で見ることになったので、いつも少しだけ離れている机の隙間がなくなった。
藤富千夏は嫌な顔一つせず、ぼくに教科書を見せてくれた。
シャーペンも貸してくれた。
消しゴムは半分に千切ってくれた。
使ってないノートがあるからと、それをくれた。
ぼくの口からは、ぶっきらぼうな「ありがとう」という言葉。
それだけ。