初恋
5
気まずかった。
もとから話をする方ではないし、女子と机をくっつけて一緒に教科書を持つのが恥ずかしかった。
ぼくの体は小さく丸まって、真ん中に置かれた教科書を遠慮がちにのぞき込む。
何の落書きもされてない、きれいな教科書。
「はい、柴田君。次の段落読みなさーい」
担任はここぞとばかり、その日ぼくをあてまくった。
立って読まなきゃいけなかったから、そのときは教科書を一人で持たなければいけない。
人の教科書をとって読み上げるというのはなんともバツが悪い。
ていうか、ぼくが読んでるとき、藤富千夏は教科書を見ることができないのだ。
ちょっとは考えろよ担任。
「はい、次も柴田君」
またか…。ぼくははぁと溜め息をついて教科書を持って立ち上がる。
次のページに進もうとページをめくる。
「あ」
隣から、小さく聞こえた声。
藤富千夏が手で口を紡いでいる。
「ん、どうかした?藤富さん」
担任が首をかしげる。
「いえ……なんでも、ありません」
「そ、じゃ、柴田君つづけて」
「あ、はい」
ぼくは教科書に目を戻す。
・・・・・・あ。
ちらりと藤富千夏を見ると、少しうつむきがち。
上からだから表情はわからない。
もとから話をする方ではないし、女子と机をくっつけて一緒に教科書を持つのが恥ずかしかった。
ぼくの体は小さく丸まって、真ん中に置かれた教科書を遠慮がちにのぞき込む。
何の落書きもされてない、きれいな教科書。
「はい、柴田君。次の段落読みなさーい」
担任はここぞとばかり、その日ぼくをあてまくった。
立って読まなきゃいけなかったから、そのときは教科書を一人で持たなければいけない。
人の教科書をとって読み上げるというのはなんともバツが悪い。
ていうか、ぼくが読んでるとき、藤富千夏は教科書を見ることができないのだ。
ちょっとは考えろよ担任。
「はい、次も柴田君」
またか…。ぼくははぁと溜め息をついて教科書を持って立ち上がる。
次のページに進もうとページをめくる。
「あ」
隣から、小さく聞こえた声。
藤富千夏が手で口を紡いでいる。
「ん、どうかした?藤富さん」
担任が首をかしげる。
「いえ……なんでも、ありません」
「そ、じゃ、柴田君つづけて」
「あ、はい」
ぼくは教科書に目を戻す。
・・・・・・あ。
ちらりと藤富千夏を見ると、少しうつむきがち。
上からだから表情はわからない。