チョコケーキ戦争
声の主――閑田羽兎(かんだ わと)は紘哉のデスクに歩み寄ると、一枚のチラシを叩き付けた。
振動で、チョコーヒーが波打つ。
「そんな紘哉さんに特報!」
「あぁ、知ってる」
「え?……と言うか、まだ何も言ってないよ!」
紘哉はチラシを取り上げ、文面を見る。
先程、自分が貰ってきたものと同じやつだ。
「何だ、知ってたのかー」
羽兎がガッカリしたように、近くのソファへ座る。
彼女は足を投げ出し、大きく溜め息をついた。
「残念だったな」
「うー。まぁ、どうせそんなことだろうと思ってたけどさ」
「チョコに関しては抜かりないから」
「自分で言っちゃうんだあ……」
呆れたように紘哉を見つめる。
彼は特に気にした様子もなく、チョコーヒーに手を伸ばした。