不遜な蜜月
愛のある結婚生活、なんて言わないけれど。
この結婚で、彼は自分の子を愛してくれるだろうか?
「・・・・・・工藤さん!」
エレベーターに乗り込もうとする一臣に、急いで駆け寄った。
「おはようございます、社長」
一臣より先に出社した理人は、会議用の資料に一通り目を通していた。
玲奈は熱いコーヒーを差し出し、理人の様子を窺う。
「何か用か?」
「いいえ、別に」
「・・・・・・なら、出ていけ。邪魔だ」
シッシッと手で追い払う理人に、玲奈は不満げ。
「社長、失礼します」
「工藤か。会議の時間だが―――」
顔を上げた瞬間、理人は固まった。
玲奈も驚いたようで、一臣の後ろに立つ、真緒をジッと見つめる。
「香坂さんが、社長にお話があると」
「―――わかった。工藤、青山。席を外せ」
理人は資料を玲奈に渡し、応接用のソファーに移動する。
二人きりの社長室、真緒はゆっくりと、理人の前に腰を下ろした。