不遜な蜜月
内線を置くと、待たせることなく一臣がやって来た。
「彼女の休みに合わせて、時間を作ってくれ。挨拶に行く」
「では―――」
「あぁ。ついさっき、返事をもらった」
理人の報告に、一臣も安堵したらしい。
彼も、心配だったのだ。
「お任せください」
「頼む。香坂、エレベーターまで送ろう」
理人と目が合い、真緒は思わず頷いてしまった。
エレベーターのドアが開き、真緒は軽く会釈をしてから乗り込む。
「詳しいことは、後で話そう」
「・・・・・・はい」
目の前の人と、たった今結婚すると自分は言ったが、現実味がない。
相手は社長で、絶対に縁のない人だから。
「それと・・・・・・」
「?」
閉じようとするドアを、理人は片手で押さえる。
「体に気をつけろ。病み上がりなんだ」
「あ、はい・・・・・・」
「それだけだ。・・・・・・また、な」
ドアがゆっくりと閉まっていく。