不遜な蜜月
金銭的に頼ると言ったが、頼りっぱなしはよくない。
「それより、頼まれた資料は見つかった?」
「あぁ、うん。もう少し待って」
真緒に言われて、彩子は思い出したように作業を再開した。
「香坂さん!」
資料室を出たところで、名前を呼ばれた。
振り返ると、一ノ瀬 誠。
「こんにちは。どうかしたんですか?」
「昨日、倒れたから心配になって。でも、元気そうだね」
言われて思い出した。
確かに昨日、体調を崩して倒れた時、誠がいた。
「もう元気です。心配をかけてしまって、すみません」
「気にしなくていいよ。でも、社長と・・・・・・いや、何でもない」
言いかけて、誠はやっぱり止めた。
プライベートなことに口を挟めるほど、親しいわけじゃない。
「それじゃ」
誠とは笑顔を浮かべて、その場から立ち去る。
「知り合いだったの?」