不遜な蜜月

「まだ帰らないの?」


ノックもなしに顔を出した玲奈を、理人が厳しい目で見据える。


「私と工藤さんしか残ってないんだから、いいじゃない」


ぶつぶつ文句を言いながら、理人の元へと歩み寄る玲奈。

また真緒のことでも聞いてくるのだろうと思っていたが、どうやら違うらしい。


「梶谷 美紗とは、お会いになったんですか、社長?」


ファイルに戻した視線を、再び玲奈へ向ける。


「答える必要、あるのか?」


素っ気なく言って、ファイルへ視線を落とす。

そんな理人に、玲奈はあからさまなため息をつく。


「・・・・・・兄さん。まさかとは思うけど、彼女と結婚しようとか、考えてたりする?」

「ここは会社だ。・・・・・・なぜ、そんなことを聞くんだ?」


ファイルに目を向けたまま、問い返す。


「なんだかんだ言って、彼女との付き合い長いし・・・・・・」


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