不遜な蜜月

「私?」

「お前、25だろう。この間、見合い話が来たと言っていなかったか?」


玲奈は肩を落とし、理人を恨めしげに見つめる。

一人娘だから、両親は早く玲奈に結婚してほしいらしく、最近は見合いにも積極的だ。


「叔母さんが嘆いていたぞ。会いもせずに見合い話を蹴るから」

「それは兄さんも同じでしょ」

「・・・・・・」


それを言われると、反論に困る。

理人が黙ると、玲奈は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。


「それで、兄さんの結婚相手は?」


忘れていなかったか。

理人はファイルを閉じて、席を立つ。


「?」

「帰る」


こんな状態で、仕事に集中できるはずもない。

玲奈は答えるまで、しつこく聞いてくるだろう。

それから逃げるには、さっさと帰るのが1番だ。


「・・・・・・香坂さん、何の用だったの?」


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