不遜な蜜月

「両親は既に他界している。この写真を見るのは、祖父母だ」

「・・・・・・そうですか」

「気にしなくていい。感傷に浸るほどの思い出も、ないからな」


でも、なんとなく理人の笑顔は寂しげに見える。

真緒はそっと、理人の頬に触れてみた。


「なんだ? 慰めてくれるのか?」


真緒の手に重ねられた理人の手は、少しだけ冷たかった。


「君の手は、あったかいな」

「・・・・・・暖房のおかげですね」


両親を思い出して泣いたことはない、とは言えない。

幼い頃、両親の死を受け入れられず、枕を濡らした夜もある。

だが、理人はもう32だ。

両親を思い出して、泣いたりはしない。

でもやっぱり、人は大切な誰かを思い出す時、それがもう二度と会えない相手である時、悲しく、寂しくなるものだ。


「香坂・・・・・・」

「あ・・・・・・」


触れた唇は、あったかくて、優しかった。


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