不遜な蜜月
熱い。
熱いから、早く外に出て冷やさなくては。
「お、おやすみなさいっ」
逃げるように車から降りる真緒を、理人は苦笑を浮かべて見送る。
「・・・・・・子ども・・・・・・俺の子ども、か」
写真に写っているのは、自分の子。
なんだろう。
なんて言えばいいんだろう。
この胸を満たす、あたたかな温もりを―――。
エレベーターに乗り込み、ボタンを押す。
冷たい夜風は、熱い頬には心地好かった。
「・・・・・・あ」
エレベーターの中、鏡に映る自分を見て、また頬が熱くなる。
鎖骨のあたり、一カ所だけ赤い。
まるで、花が咲いたみたいな、綺麗な色。
「・・・・・・」
どうして、彼はキスしたのだろう?
理由を考えようとして、真緒は首を振る。
好かれたい、愛されたい、と求めるべきではない。
ふたりの関係は、望んだ結果ではないのだから。
嫌われていない。
その事実だけで、十分なはずだから―――。