不遜な蜜月

シンプルなデザインながら、丈夫で使いやすいこの家具ブランドは、今も若い世代に人気がある。

海外家具の輸入販売も父は積極的に行い、独自のルートを築き上げた。

良くも悪くも、あの人は仕事人間だったのだ。


「・・・・・・」


ファイルを乱暴に投げて、理人はため息をつく。


自分は、あの人―――父親によく似ている。

仕事人間な所や、経営の才能。

それを思うと、自分も父親のように家族を、子どもを顧みないのではないだろうか。


「はぁ・・・・・・」

「悩み事ですか?」

「・・・・・・ノックはしたのか?」


目の前に立つ玲奈に、理人は厳しい視線を向ける。


「しました」

「そうか。・・・・・・で、なんだ?」

「来週のイタリア出張について、2、3確認したいことがありまして」


年末だというのに、イタリアまで出張。

向こうの老舗家具メーカーが、どうしても会いたいと言うので急遽決まった。


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