不遜な蜜月
「宿泊先のホテルと・・・・・・。悩み事ですか?」
手帳を開き、玲奈はスケジュールを確認する。
「なんでもない」
「でも・・・・・・」
「用が済んだなら、仕事に戻れ。あ、イタリアにはお前を同行させる」
理人の発言に、玲奈が首を傾げる。
「どうして私が? 工藤さんの方がいいと思います。というか、いつも工藤さんを連れていくじゃないですか」
「・・・・・・いろいろと、事情があるんだ」
玲奈の言う通り、海外出張に同行するのは常に一臣だ。
だが、数日の出張とは言え、真緒のことがある。
事情を知るものを傍に置いておきたい。
「事情、ですか?」
「変な勘繰りはするな。ほら、仕事に戻れ」
玲奈は仕方なしと諦め、社長室を出ていく。
(・・・・・・出張前に、片付けておくか)
携帯を取り出し、理人は慣れた様子で電話をかける。