不遜な蜜月

「理人から、聞いたのよ。直接、ね」

「―――!」


俯いたら、美紗の赤い爪が視界に入り込む。

それが何だか嫌で、真緒はまた、目を逸らす。


「少し、お話しない? 香坂さん」

「・・・・・・っ」


断れば良かったのに。

なのに、声が出なかった。










―――・・・・・・。

カフェの窓際に座り、美紗はミルクティーを、真緒はココアを頼んだ。


「ココアでいいの? コーヒーとかでもいいのよ。ここのコーヒー、美味しいから」

「コーヒーは、匂いがきつくて」

「あぁ、つわりなのね」


美紗が笑い、真緒は視線を泳がせる。

彼女と理人の関係―――。

聞いてもいいのだろうか?

いや、そんなことをする権利を、自分は持っていない。

ぐるぐると、思考と感情が掻き混ぜになる。


< 230 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop