不遜な蜜月
「理人から、聞いたのよ。直接、ね」
「―――!」
俯いたら、美紗の赤い爪が視界に入り込む。
それが何だか嫌で、真緒はまた、目を逸らす。
「少し、お話しない? 香坂さん」
「・・・・・・っ」
断れば良かったのに。
なのに、声が出なかった。
―――・・・・・・。
カフェの窓際に座り、美紗はミルクティーを、真緒はココアを頼んだ。
「ココアでいいの? コーヒーとかでもいいのよ。ここのコーヒー、美味しいから」
「コーヒーは、匂いがきつくて」
「あぁ、つわりなのね」
美紗が笑い、真緒は視線を泳がせる。
彼女と理人の関係―――。
聞いてもいいのだろうか?
いや、そんなことをする権利を、自分は持っていない。
ぐるぐると、思考と感情が掻き混ぜになる。