不遜な蜜月

「あの、私に何を・・・・・・」


美紗が笑う。

綺麗な笑顔だった。

赤い爪と同じ赤い唇が、優しく微笑んでいて。


「ねぇ、理人と結婚したい?」

「え・・・・・・?」


カチャ・・・・・・とカップが小さな音をたてる。


「妊娠したから、結婚するんでしょ?」

「えっと・・・・・・」

「仕方なく」

「それは・・・・・・」


どうして結婚するのか?

それは、お腹の子は社長の子なんだし・・・・・・。


「理人のこと、好き?」

「・・・・・・っ」

「だから結婚するの?」

「す、すみません・・・・・・っ」


吐き気で涙が出そうになった。

理人が好き?

そんなの、ありえない。

そんな感情を抱いたら、抱いたら―――。


(・・・・・・社長の負担になる)


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