不遜な蜜月

なんでだろう?

なんでこんなにも、彼女の言葉に心が揺れるんだろう。

彼女が、親しげに“理人”と呼ぶから?

家族にしか話していない結婚を、理人が彼女に話したから?

あぁ、嫌だ。

これじゃあ、まるで―――嫉妬してるみたいじゃないか。


「ねぇ、香坂さん。私が理人に言って、結婚を考え直させてもいいのよ?」

「え? あの・・・・・・」

「シングルマザーは大変だろうから、養育費を貰えば、結婚しなくてもいいと思うの。どう?」

「梶谷さんは・・・・・・結婚、してほしくないんですか?」


つい、口から漏れてしまった。

彼女は、とても綺麗な笑顔で、とても優しい声で、まるで味方みたい。

でも、違和感が拭えないままだった。

彼女と向かい合っていても、落ち着けない。

安心できない。


「・・・・・・そうね」


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