不遜な蜜月
美紗の瞳が、冷たくなったような気がした。
「理人が結婚してもしなくても、どうでもいいのよ」
ミルクティーを飲み干して、美紗は伝票を手に持つ。
「ただ、理人があなたを大事にするから」
赤い爪。
美紗の綺麗な指先が、頬を優しく撫でる。
「玲奈みたいな女だったら、引っ張ったいてスッキリできたけど」
地味な女。
普段の理人なら、きっと気づかないまま通り過ぎていくのに。
「・・・・・・バイバイ。またね、香坂さん」
「あ・・・・・・」
形容しがたい表情で、美紗は立ち去る。
真緒は半分残ったココアを飲もうと手を伸ばしたが、甘いものを飲む気分になれなかった。
「・・・・・・」
携帯を取り出し、アドレス帳を開く。
理人の名前。
美紗とのことを聞きたいとかじゃない。
今、電話をかけたら―――ううん、メールでもいい。