不遜な蜜月
あなたの声でも、あなたからのメールでも、きっと安心できる気がするから。
過去を問う権利なんて、自分にはない。
あなたを好きになって、負担をかけるつもりはない。
偶然に偶然が重なって、今の関係がある。
これは、望んだ結果じゃない。
だから、胸に浮かんだ疑惑は口にしないで、しまい込む。
だから、だから・・・・・・。
私の名前を、呼んでほしい。
香坂でもいいから。
「・・・・・・ふぅ」
携帯を閉じて、真緒は軽く頭を振る。
できもしないことを、何考えているんだろう。
「香坂さん??」
「はい・・・・・・?」
名前を呼ばれて振り返れば、爽やかな笑顔を浮かべた一ノ瀬 誠が立っていた。
「やっぱり香坂さんだ。ひとり?」
「は、はい」