不遜な蜜月
少しばかり潤んだ瞳を手で拭い、真緒は笑顔を返す。
「・・・・・・座ってもいい?」
「ど、どうぞ」
誠は向かいの席に座り、手早くコーヒーを頼む。
「誰かと待ち合わせだった?」
「いえ、大丈夫です」
ひとりで居るよりは、幾分か気分がマシだ。
真緒はココアを無理矢理飲んで、カップの中身を減らす。
「元気ないね」
「そう、ですか?」
隠すように、真緒は目を伏せる。
「香坂さんの元気ないとこばっか見てるな、俺」
「す、すみません」
謝る必要なんてないのに、申し訳ない気持ちが込み上げてきてしまう。
そんな真緒を見て、誠は苦笑する。
「一ノ瀬さんは、優しいですね。私のこと、気がけてくれて」
同じ部署でもないのに、残業を手伝ってくれたこともあった。