不遜な蜜月

女子社員に人気があるのも納得だ。


「俺ね、妹が欲しかったんだよ」

「妹、ですか?」

「そ、妹。弟がいるんだけど、かなり生意気でさ。だから、妹がいたらなぁ、ってよく親に無理言って困らせてた」


無邪気に語る誠を見て、真緒は微笑む。

弟や妹が欲しいと思ったことは、真緒にもある。


「だからなのかな、香坂さんのこと気にかけるの」

「私、妹みたいですか?」

「うん」


嫌味なく笑う誠は、運ばれてきたコーヒーを美味しそうに一口飲む。


「・・・・・・っ」

「コーヒー、苦手?」


コーヒーの匂いに、真緒が眉間にシワを寄せる。

それに気づいた誠が、申し訳なさそうに目を細めた。


「いえ、そういうわけじゃ・・・・・・。あの、私―――」

「ん?」

「すみません、なんでもないです」


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