不遜な蜜月

男性だし、誠は優しいから、相談してみたい気持ちに駆られた。

もし、好きでもない女性が自分の子を妊娠したら、とか。

自分は嘘が苦手だから、話した瞬間、バレてしまうだろう。

けれど、誠は面白半分に茶化したり、言い触らしたりしないと思う。


でも、口を閉ざすことにした。


「私、帰りますね」

「あ、途中まで送るよ」

「だ、大丈夫です!」


慌てて真緒は首を振る。

送迎の車が、実はカフェ近くで待ってくれているのだ。

そんな場面を見られたら、怪しまれてしまう。


「でも、もう暗いし」

「ほ、ホントに大丈夫ですから。ありがとうございます。それじゃ、私はこれでっ」


早口でまくし立て、真緒は急いでカフェから飛び出す。

誠が心配するような目で見ていたことに、多少の罪悪感を感じたが、今は気にしないことにした。


< 239 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop