不遜な蜜月
物に八つ当たりもしない。
人に暴言を吐いたりもしない。
でも、怖いんだ。
『・・・・・・切るぞ』
「う、うん」
ブツッと切れた電話に、玲奈は脱力する。
ヤバい、かもしれない。
理人は知られたくなかったのだ、美紗の存在を。
そのぐらい、玲奈にだってわかる。
「私のせい、だよね?」
今更ながらに、背筋が冷や汗を伝う。
「しゃ、謝罪の電話を!」
携帯の通話ボタンを押そうとしたけれど、手がそれを拒否する。
(ど、どうしよう・・・・・・)
理人がわざわざ墓穴を掘るような真似をするとは思えないが、もしも今回のことが原因で、結婚の話が流れてしまったら・・・・・・。
「わ、私・・・・・・兄さんに一生恨まれるんじゃ・・・・・・」
いや、恨まれるだけじゃ済まないかもしれない。
玲奈はひとり、明日なんて来なければいいと思っていた。