不遜な蜜月
―――・・・・・・。
「青山さん、この書類なんだけど、大丈夫かな? 青山さん?」
秘書課のデスクで、玲奈は悶々としていた。
今日、理人はイタリアから帰国し、空港から真っ直ぐに、会社へと戻ってくる。
一応秘書らしく、お疲れですし、今日はご自宅で休まれては? みたいなことを言おうと思った。
思ったけれど、そんな勇気は出ないまま。
(どうしよう・・・・・・。下手に言い訳しない方がいいよね? そもそも、香坂さんは梶谷 美紗の名前を聞いただけだし)
なんの問題もない。
私は笑顔で上司を迎えよう!
そう、心に決めた瞬間―――。
「お帰りなさいませ、社長」
「!!!」
嬉しそうな秘書の声に、玲奈の体があからさまにびくついた。
「お疲れ様です」
「あぁ。―――青山、コーヒーを頼む」