不遜な蜜月
嘘じゃない。
後先考えなかったのは、確かに軽率だったかもしれないが。
「でも、香坂さんが梶谷 美紗の名前を知っても、言わなきゃバレない・・・・・・よね?」
一臣に助けを求めるよう目配せしたが、無視された。
「大丈夫だよ! 香坂さんとあの女が会うことなんてないから」
「そう、だな」
会う会わないの問題は、あまり心配していない。
ただ、自分は過去―――つい最近まで、美紗と肉体関係にあった。
今は違っても、それは事実。
しかも、付き合っていたのではなく、体だけの関係。
真緒がその事実を知らないにしても、理人には何とも言えない後ろめたさ、のようなものがあった。
「書類に軽く目を通したら、今日は帰る。下がれ」
玲奈はとりあえず、怒りを直接ぶつけられなかったことに安堵した。
けれど、理人の表情が変わらず雲っているので、やっぱり気分は晴れなかった。