不遜な蜜月

―――・・・・・・。

会社を出る直前、真緒の携帯が鳴った。

足を止めて電話に出れば、彩子も一緒に立ち止まる。


「もしもし?」

『こんばんは。工藤ですが、今よろしいでしょうか?』


電話の相手が相手なので、真緒は緊張してしまう。


「大丈夫ですが・・・・・・」

『何か、予定はありますでしょうか? なければ、お願いしたいことがありまして』


お願いとは珍しい。

幸い、今夜は彩子と食事の約束をしていないので、予定は空いている。


『では、いつもの場所でお待ちしております』


電話を切り、真緒は彩子に事情を説明する。


「お願いねぇ」

「彩子も来る?」


真緒の申し出に、彩子は首を振る。


「遠慮しとく。あの工藤って秘書、なんか苦手なのよね」

「そう・・・・・・。じゃあ、また明日」


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