不遜な蜜月
会社を出て彩子と別れ、真緒はいつもの送迎してくれる車の元へと向かった。
電話で話した通り、一臣はそこにいた。
車に乗り込み、少し経ってから、真緒は耐え切れず用件を尋ねる。
「お願いというのは、一体・・・・・・」
「大したことではありません。少し、社長と会っていただきたいだけですから」
「何か、あったんですか?」
一臣は首を振り、真緒を見つめ返す。
「社長は出張帰りで疲れているんですか、ちゃんと休んでいるのか心配なんです。香坂さんが言ってくれれば、社長も大人しく休むと思うので」
「あぁ、そういうことですか」
一臣のお願いを、真緒は嫌がることなく承諾した。
一臣は部屋の前まで案内すると、慣れた手つきで鍵を開ける。
「お酒を飲んでいるだけなら、すぐ寝ると思います。仕事をしていたら、無理矢理にでも寝かせてください」