不遜な蜜月
決断×後悔
32歳という年齢は、結婚していてもおかしくないし、結婚していなくてもおかしくはないと思う。
特に、男の場合は。
だが、家族からすれば、いつまでフラフラしているんだ、と思うらしく、理人は度々、結婚についてほのめかされていた。
そして、今も。
「こうしてふたりで食事するのも、久しぶりね」
レストランの個室、目の前には品のいい初老の女性。
理人の祖母・黒崎 楓。
幼い頃に両親を事故で亡くした理人は、祖父母に育てられた。
楓は、祖母であり母親だ。
「すみません。近頃、忙しかったので」
「あの人と同じことを言うのね。仕事もいいけれど、きちんと体も休めないと」
楓は優しく微笑み、グラスに手を伸ばす。
「こういう時、お嫁さんがいたら、心配も減るのだけど・・・・・・」
「生憎と、そんな相手はいませんよ」
赤ワインを飲みながら、理人は柔らかな笑顔を浮かべる。
「そう。理人はお見合いも嫌がるし、あなたに任せるしかないけど・・・・・・」