不遜な蜜月
鍵を開けて、真緒を中へ入るよう促す。
「お帰りになる際は、遠慮なくご連絡ください。では、よろしくお願いします」
一臣が、部屋の鍵を真緒に渡す。
丁寧に頭を下げて、一臣はゆっくりと玄関の扉を閉めた。
「・・・・・・」
真緒は靴を脱いで、スリッパを履く。
以前来たのは昼間だったし、風邪を引いていたから、なんだか初めて来たような気分だ。
「お、お邪魔します」
廊下をなるべく静かに歩き、リビングの明かりがついていることに気づく。
(社長、起きてるのかな?)
リビングへ続く扉を、音をたてないよう開ける。
ソファーに座る姿が見えて、真緒は緊張してきた。
理人は背を向けているので、こちらには気づいていない。
(なんて声をかけたら・・・・・・)
迷いながらも、真緒は呼びかけてみることにした。
「社長?」