不遜な蜜月
社長職に就くことが決まってすぐ、見合いを勧められた。
初めから乗り気でもなかったし、相手の女性に興味さえも抱けなかったので、丁重に断った。
以来、見合いは絶対にしないと、祖父母に宣言している。
理人自身、いずれは結婚しなくてはならないとわかっている。
社長という立場の者が、いつまでも独り身でいるわけにはいかない。
愛した女性と結婚、なんてことは思わないが、興味さえ抱けない女性と結婚するつもりはない。
だが、結婚してもいいと思える女性に、まだ出会ったことはない。
(妥協して、変な女と結婚したくはないからな)
理人がため息をつくと、楓は苦笑した。
「生きてるうちに、あなたの子どもを抱けたらいいわね」
「お祖母さん」
「ふふふ、ごめんなさい。でもね、あなたの子どもを抱きたいのは、本当よ」
少し寂しく微笑む楓に、理人は返す言葉が見つからない。
「ちょっとはプレッシャーになったかしら?」