不遜な蜜月
チラリと眠る男性を、横目で見てみた。
「・・・・・・」
何と言うか、綺麗な顔だ。
少し茶色がかった黒髪から覗く、閉じられた瞼と長い睫毛。
鼻梁も唇の形も良いし、肌も綺麗で滑らかそう。
首筋から鎖骨にかけてのラインも、妙な色香があって。
「うちの社長に、似てる・・・・・・?」
ふと漏れた真緒の言葉に反応するかのように、男性の睫毛が微かに震えた。
「! 会社、遅刻しちゃう・・・・・・!」
時計を見れば、家に帰って着替えてる時間などないことに気づく。
真緒は急いで靴を履き、慌てて部屋を出ていく。
その数分後―――黒い携帯が騒がしく鳴り出した。
「ん・・・・・・?」
肌触りの良いシーツから、程よく筋肉の付いた腕が顔を出す。
枕元に手を伸ばすと、シーツが滑り落ちた。
「・・・・・・?」
枕元にあるはずの携帯が、見当たらない。
ようやく顔を上げて、状況を理解した。