不遜な蜜月

多分、見たのは美紗からのメール、だと思う。


「・・・・・・」


雑誌を開き、興味もない芸能ニュースの記事を隅から隅まで読んでみる。


「香坂、悪いんだが急用ができた。何かあれば、電話してくれ」

「・・・・・・はい」


コートを着る理人を見つめ、真緒はつい、口から漏れてしまった。


「梶谷さんに、会いに行くんですか?」

「・・・・・・え」


しまった、と後悔しても遅い。

ハッキリ口から出てしまったのだから。


「す、すみません。何でもないです」

「会ったのか? 美紗と」

「・・・・・・」


彼女を名前で呼んだ。

焦るような目で、見つめてくる。


「・・・・・・すみません」


きっと、知られたくなかったことなんだ。

真緒は泣きそうになる自分を励まし、笑顔を浮かべる。


< 312 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop