不遜な蜜月
「私、することもないんで、もう寝ますね」
「香坂!」
布団を頭が隠れるまで被り、真緒は理人が出ていくのを待つ。
程なく、理人はゆっくりと歩きだし、扉を開ける音が聞こえる。
(行かないで、って言ったら・・・・・・)
傍にいてほしい。
あの人の所に、行かないでほしい。
きっと、具合が悪いと言えば、理人は残ってくれる。
でも、それを言うのは卑怯だ。
「香坂・・・・・・おやすみ」
「・・・・・・はい」
泣きたい。
ううん、もう泣いてる。
扉は閉まり、足音が遠ざかっていく。
どうして、こんなにも苦しいんだろう。
わかってる。
好きになってしまったからだ。
恋って、こんなにも苦しいものだっただろうか?
わからない。
この関係は特殊すぎるから。