不遜な蜜月
ゴソゴソと起き上がり、真緒は目を擦る。
(社長の匂い・・・・・・)
室内に残る理人の香りに、真緒はまた、泣きたくなる。
こんなに苦しいのは、嫌だ。
だからといって、理人を嫌いになろうとしても出来ないだろう。
「貯金、どのくらいあったっけ・・・・・・」
真緒は雨が降り続ける外を見つめ、ぽつりと呟く。
「・・・・・・」
行かないで、って言えばよかった。
泣いてみればよかった。
嘘でも具合が悪い、って言えばよかった。
でも、そんなこと出来ない。
「我慢するの慣れてるし、大丈夫だよ」
そう、大丈夫。
少し我慢したら、何もかもうまくいく。
だから、今夜はもう眠ろう。
雨の音を聞いていれば、すぐに眠くなるはずだから―――・・・・・・。