不遜な蜜月
翌日、無事に退院することになった真緒。
『迎え行かなくて大丈夫? 今日は珍しく旦那いるし、車出せるよ』
「大丈夫だよ。タクシーで帰るから」
姉の菜緒が迎えを申し出てくれたが、さすがに義兄も巻き込むと悪い気がしてしまう。
『ホントに? じゃあ、晩ご飯作りに行こうか?』
「心配しすぎだよ」
真緒は苦笑いしながら、電話を終える。
「えっと、タクシーを呼ばなきゃだから―――」
「香坂さん!」
名前を呼ばれて、病院の出入口に目を向ける。
「一ノ瀬さん? え、どうしたんですか?」
驚く真緒に、誠は爽やかな笑顔を向ける。
「今日、退院だろ? 自宅まで送るよ」
「わ、悪いですっ」
慌てて断ろうとする真緒に、誠は苦笑する。
「無理はよくないよ。まさか、電車とかで帰ろうと思ってた?」