不遜な蜜月
(あ、マフラー・・・・・・)
なんて単純なんだろう。
それだけのことで、嬉しいと思う自分がいる。
「ぐ、偶然ですね」
顔を上げて、真緒が笑う。
無理した笑顔。
そんな笑顔をさせているのは、自分のせい。
「回りくどい言い方はしない」
「?」
いろいろと考えていた。
ありきたりだけど、愛してると言うべきか、それとも衝動に任せて抱きしめるべきか、とか。
けど、言いたいことを言おうと決めた。
愛してるのも、抱きしめたいのも本当。
でも、どうしても言いたいことがある。
「真緒。俺は君と、家族になりたい」
真緒が目を伏せ、首を振る。
理人は、何も言わなかった。
これが真実。
これだけが、君に言える自分の心のすべて。
「・・・・・・私・・・・・・あの・・・・・・」