不遜な蜜月

真緒が戸惑っているのは、あの時の社長室で言った理人の告白と違うからだろう。

好きだと言ったのは真実だが、真緒の心を捕まえることはできなかった。

ありのままの自分を見せなければ、真緒はこちらを見てくれない。


「真緒とお腹の子と、家族になりたい」

「・・・・・・本当、に?」

「あぁ」


理人が笑うと、真緒は目を伏せてしまう。


「泣いてるのか?」

「・・・・・・っ」


目を擦り、真緒は涙を止めようと必死になる。


「自惚れてもいいか?」


真緒の手を握ると、冷たかった。


「それは嬉し泣きだ、って」

「・・・・・・はいっ」


一歩近づいたら、真緒は逃げなかった。


「ひどい顔だな」


涙を流す真緒の顔を、覗き込む。


「すみません・・・・・・」


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