不遜な蜜月
優秀な秘書は、情報収集も難なくやってのける。
どのような手段でその情報を手に入れたかは知らないが、無視はできない。
「だが、俺の子かどうかは―――」
「彼女は現在、交際している男性はいません。それに、あの夜以来、誰とも出かけていないようです」
理人の現実逃避を、簡単に打ち砕く一臣。
「お前の言う通り、失態、だな」
苦々しく呟く理人に返ってきたのは、予想外の言葉だった。
「いえ、私は好都合だと思いますが」
「好都合?」
意味がわからず、理人は眉間にシワを寄せる。
「跡継ぎの問題が、解決されるのでは?」
「・・・・・・俺に、結婚しろと?」
あからさまに嫌そうな顔をする理人。
結婚なんて、面倒すぎて考えるのも遠慮したいのに。
「では、子どもを引き取りますか?」
「・・・・・・彼女が産まないと言えば、この問題は解決だ」
酷なことを言っているのは、自分でもわかっている。