不遜な蜜月
だが、今は誰にも何にも縛られたくはない。
(お祖母さんの願いを叶える好機だとも思えるが・・・・・・)
考えを振り払い、理人は書類に視線を向ける。
「近々、彼女と話をする。時間を作ってくれ」
「わかりました」
一臣は丁寧に頭を下げると、静かに社長室を出ていく。
「・・・・・・妊娠、か」
あの夜、避妊はしていたはずだが―――。
理人自身、酒を飲んでいたし、もしかしたら、とため息を漏らす。
「面倒だな・・・・・・」
書類に目を通しながらも、集中できずにいた。
答えは出せぬままに数日が過ぎ、変化は急激に訪れた。
「社長室に、ですか?」
部長から告げられたのは、不安を煽る言葉だった。
「あぁ。君を呼んで欲しいそうで。・・・・・・何かしたのか?」
「・・・・・・いえ、何も」
心配する部長に、真緒は首を振る。
心当たりはあるけれど、もう一ヶ月も前のことだ。