不遜な蜜月

今更、と思いはするが―――。


(本当に、社長があの人・・・・・・?)


無意識に、お腹に手を添える。


「真緒、社長に呼ばれたって、何したのよ?」


一旦デスクに戻った真緒に、彩子が心配と好奇を含んだ視線を向ける。


「何もしてないわ」

「そういえば、前に真緒の名前聞かれたし・・・・・・」

「行ってくる」


これ以上いたら、彩子に余計なことまで聞かれそう。

真緒は逃げるように、社長室へ向かった。










社長室のあるフロアへ来たのは初めてだ。

真緒は深呼吸をしてから、秘書課に顔を出した。


「あの、香坂 真緒です。呼ばれたとお聞きしたのですが・・・・・・」

「はい、聞いていますわ。こちらへどうぞ」


青山 玲奈が、綺麗な笑顔を浮かべて真緒を社長室まで案内する。

秘書課は一臣を除いて、全員女性。

社長室へ向かう真緒は、自然と視線を集めてしまう。


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