不遜な蜜月
(恥ずかしい・・・・・・)
あまり注目されたくなくて、早く帰りたい気分になる。
「社長。香坂さんが来られました」
「入れ」
玲奈の声に返ってきたのは、低い男性の声。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
社長室に足を踏み入れ、真緒はゴクリと唾を飲み込む。
背後で、扉の閉まる音が聞こえた。
「おかけください」
「あ、はい」
一臣に促され、真緒は黒いソファーに浅く腰掛ける。
さすがは社長室。
置いてある家具は一流のものだ。
座った時の感触が、まるで違う。
「工藤、席を外せ」
「わかりました。失礼します」
一臣が出ていくと、理人はようやくパソコンから顔を上げた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目が合い、逸らすべきか悩む。
それとも、呼ばれた理由を聞くべきだろうか?
「香坂 真緒、で間違いないな?」
「は、はい」