不遜な蜜月
真緒は自分の手をギュッと握り締め、目を伏せた。
「君は、どうしたい?」
「・・・・・・と、言いますと?」
「産むのかどうか、だな」
なんとなく、真緒は察していた。
自分が妊娠の事実を受け入れられないように、理人も受け入れられないのだ。
「・・・・・・どう言ってほしいんですか?」
まだ、答えは出せていない。
真緒は、理人の考えを聞いてみたいと思った。
「跡継ぎは必要だ。だが、今ではないと思ってる」
「・・・・・・下ろせ、って言いたいんですか?」
真緒と目が合い、理人はばつが悪そうに視線を逸らす。
「君だって、まだ仕事をしていたいだろ? 望んだ妊娠ではないわけだし」
言い訳じみている、と理人自身が1番わかっている。
だが、うやむやにしていい問題ではない。
「望んでいなくても、命だわ! 私のお腹に・・・・・・いるんだもの」
綺麗事だとわかっている。
産むという決断を下していない自分が言っても、中身は空虚だ。