不遜な蜜月
だというのに、彼女は真っ直ぐと自分を見つめている。
その瞳からは、打算的な思惑は感じない。
だから、つい咄嗟に出てしまった言葉。
他意はない。
「あ・・・・・・」
「・・・・・・っ」
けれど、確実に彼女を傷つけた。
羞恥や怒りで赤くなれば言い繕こともできたのに、彼女は呆然とした後、どこか悲しげに瞳を揺らすだけ。
「いや、その・・・・・・」
「あなたの子じゃなかったとしても、私の子よ」
ソファーから立ち上がり、理人を見下ろす。
「社長とのことは忘れます。ご迷惑もかけません。ですので、社長も忘れてください」
「・・・・・・」
頭を下げて、真緒は社長室を出ていこうとする。
「認知なんて、しないぞ」
「結構です。それに、社長の子じゃありませんから」
泣きたくなる気持ちを押さえ込んで、真緒は社長室を出ていく。
(なんなんだ・・・・・・)
調子が狂う。
予想していた展開と、違いすぎる。