不遜な蜜月

だというのに、彼女は真っ直ぐと自分を見つめている。

その瞳からは、打算的な思惑は感じない。


だから、つい咄嗟に出てしまった言葉。

他意はない。


「あ・・・・・・」

「・・・・・・っ」


けれど、確実に彼女を傷つけた。

羞恥や怒りで赤くなれば言い繕こともできたのに、彼女は呆然とした後、どこか悲しげに瞳を揺らすだけ。


「いや、その・・・・・・」

「あなたの子じゃなかったとしても、私の子よ」


ソファーから立ち上がり、理人を見下ろす。


「社長とのことは忘れます。ご迷惑もかけません。ですので、社長も忘れてください」

「・・・・・・」


頭を下げて、真緒は社長室を出ていこうとする。


「認知なんて、しないぞ」

「結構です。それに、社長の子じゃありませんから」


泣きたくなる気持ちを押さえ込んで、真緒は社長室を出ていく。


(なんなんだ・・・・・・)


調子が狂う。

予想していた展開と、違いすぎる。


< 50 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop