不遜な蜜月

追いかけて来て、一体何を言うつもりだろう?

嫌な予感しか浮かばなくて、真緒は急いで階段を下りる。


でも、急ぎすぎたせいで、階段を踏み外してしまった。


「・・・・・・っ!」


落ちる、と覚悟した。


(・・・・・・? 痛くない・・・・・・?)


一向に訪れない痛み。

真緒は恐る恐る、目を開いてみた。


「あ・・・・・・」

「危ないだろ? 気をつけろ」


腰に回された腕により、真緒の体は支えられていた。

理人は手すりに掴まり、真緒の体を支え、安堵の息を漏らす。


「妊娠してるのに、注意力が足りない」

「・・・・・・」


胸に引き寄せられ、理人と目が合う。

あの夜と同じ匂い―――。


「はぁ。何かあったら、どうするつもりだ」

「・・・・・・社長が気にする必要、ありません」


冷たく言い放ち、真緒は理人から離れる。


「ありがとうございました」


階段を再び下りようとする真緒の手を、理人が素早く捕まえる。


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