不遜な蜜月
階段を下りる足が止まり、真緒は恐る恐る振り返る。
「エレベーターを使え」
「・・・・・・はい」
頷きながら、とりあえず掴まれた手を離してもらおうと、自分の手を引っ込めようとする。
けれど、理人はそれを許さず、真緒の手をしっかりと握り、エレベーターまで向かった。
戻って来るのを待っていたように、エレベーターは到着した。
真緒が乗り込む寸前、理人を呼ぶ声が背後から響く。
「社長。会議のお時間ですが」
玲奈が一瞬だけ真緒を見て、すぐに理人へと視線を戻す。
同じ女性から見ても玲奈は綺麗で、理人と並ぶと美男美女でお似合いだ、と他人事のように思っていた。
「少し遅れると、伝えてくれ」
「・・・・・・わかりました」
ほんの一瞬、玲奈の顔つきが変わったように見えたが、気のせいだろう。
エレベーターに乗り込んだ理人に頭を下げ、玲奈は静かに背を向けた。