不遜な蜜月
グラスを置こうとする理人の手が、一瞬鈍った。
「お前が見合いを嫌っているのはわかっている。だが、先方はやけにお前を気に入っていてな」
「断ってください」
顔色ひとつ変えず、理人は告げる。
結婚を急かす、祖父母の気持ちはわかる。
若くはない自分達が生きている内に、孫の理人に結婚してもらって、安心したいのだろう。
息子夫婦―――理人の両親が既に亡くなっているから、尚更そう思うのだ。
「理人。良い方かもしれないのに、はじめから拒むのはよくないわ」
「会ってみるだけでも、いいじゃないか。楓じゃないが、私だってお前の子を見たいんだ」
「!」
聡志の言葉に、理人は内心、ドキリとした。
脳裏に浮かんだ真緒の顔を、振り払う。
「お祖父さん達の気持ちはわかります。けど、見合いなんて、するだけ無駄です」
グラスを手にし、中身を一気に飲み干す。
「なら、自分で相手を見つけると言うのか?」